● Yellow-rumped Warbler:キヅタアメリカムシクイ [Wikipedia]より
インターネットを回遊していたらこの記事があった。
今年4月のことで数カ月ほど前。
『
東京新聞 2010年4月9日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyoguide/amuse/bird/CK2010040902000124.html
キヅタアメリカムシクイ 日本で初記録の野鳥
神奈川県鎌倉市の海岸で3日、枝に止まる迷鳥のキヅタアメリカムシクイ。
海藻類にわく小さな虫を捕食する。北米に分布するアメリカムシクイ科。
1月に鎌倉自主探鳥会グループの池英夫さんが発見。
3月末から連日多くの人が訪れる。
山階鳥類研究所の茂田良光さんは
「日本で初の記録です。アラスカで繁殖する基亜種で雄の第1回冬羽。アメリカでは普通に見られる」
と話す。
全長約13センチ。
』
今年1月に鎌倉で発見されたとある。
『
神奈川発コミュニテーサイト:カナコロ 2010年4月6日
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1004050033/
日本での確認は恐らく初めて、渡り鳥「キヅタアメリカムシクイ」が鎌倉に
● 鎌倉市内の海岸に姿を見せるようになった「キヅタアメリカムシクイ」(佐藤政明さん撮影)
北米原産の渡り鳥「キヅタアメリカムシクイ」が、鎌倉市内の海岸に飛来し、滞在している。
これまで確認されているのは1羽で、山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)によると、日本での確認は恐らく初めてになるという。
キヅタアメリカムシクイは、夏場をアラスカやカナダで過ごし、米国南部やメキシコ、中米などで越冬する渡り鳥。
スズメほどの大きさで、小さな昆虫やフルーツ・木の実などを食べるという。
鎌倉の海岸では、3月下旬ごろから確認されるようになった。
自然の飛来かどうかは今のところ不明だが、同研究所の平岡考専門員は
「嵐に遭遇するなど何らかの原因で、アラスカからちょっと角度を間違えて南下してきた可能性はある」
と指摘する。
鳥の撮影家らには早くも評判になっているようで、海岸には連日多くの人が詰め掛け、ずらりとカメラを並べる光景も見られる。
全国で鳥の写真を撮影している横須賀市の佐藤政明さん(61)は「仲間から聞いて撮りに来た。
体の側面と頭頂部、尾の付け根部分が黄色く染まっているのが特徴的で、きれいだ」と話していた。
』
サイトを覗いて写真をみてみる。
『
iza 【鳥】キヅタアメリカムシクイ:イザ! 2010/04/05
http://nob63h.iza.ne.jp/blog/entry/1533216/alltb/
何やら長ったらしい名前ですが、日本初確認の珍鳥です。
額、腰などに鮮やかな黄色の斑。
基本の羽色だけでは地味過ぎて判然としませんが、この黄色でバッチリ識別できます
アメリカ大陸が“根城”の鳥がなぜ日本へ?
鳥見に欠かせない図鑑「日本の野鳥590」には、「今後、記録されるかもしれない」と記されてはいますが…
湘南の海岸沿いの梢を行ったり来たり。
時には浜に打ち上げられた海藻を突っつき、隠れた虫を探し出してたべていました
大きさはスズメより少し小さい位。
せっせと餌をついばむ姿はけなげです
ちっちゃな鳥の偉大さに驚かされますが、もっと驚かされるのは人間の仕業
↑ 連日この賑わいだそうです。
この日も100人は軽く超えていましたかね。
1人平均100万円を超す機材を抱えていますから、ココに集結している資産総額は1億円!
ビックリ~!!
』
アメリカ在住の方のサイトから。
『
Yellow-rumped Warbler(キヅタアメリカムシクイ) 2010年04月08日
http://luluhime.blog69.fc2.com/blog-entry-304.html
びっくりしましたよ!
「日本にYellow-rumped Warbler(キズタアメリカムシクイ)が渡ってきた」
と、何人かの方からコメントにて教えて頂きました。
Yellow-rumped Warbler(キズタアメリカムシクイ)は、西部と東部とでは少し模様が違い、西部は顎下が黄色、東部は顎下が白です。
こちらは西部ですので顎下が黄色です。
日本に渡っていった方は東部のYellow-rumped Warbler(キズタアメリカムシクイ)で、多分、ユーラシア大陸を横断して日本に到着したと思われ、
「あんな小さな体でどうやって?!」
とこっちの鳥仲間と話していますし、オットの仲良しのアラン(野鳥のベテランさん)は
「はいはい、エイプリルフールね」
と言ったくらいです。
南カルフォルニアでは冬鳥で、スズメ並に居ます。
愛らしい可愛い鳥で私も大好きですが、あえて撮ろうとは思わないので、もしかしたら脚光を浴びたくて日本デビューをしたのかもしれません(笑)だとしたら大成功ですね。
飛行機に乗って見に行った方もいらっしゃるとかで更に吃驚!大フィーバー!
オス、メスの見分け方は一目瞭然で、濃いグレー&濃い黄色がオスで、薄いグレー&薄い黄色がメスで少し茶色が混ざったような毛色です。
コメント欄
BBさん
--------
はい!西のキヅタでございます!
数人の方に写真を見せて頂きましたが、今の所、喉白のようですね。
私の説は、
・彼らの生態から推測すると(虫を食べ続ける)海を一気に渡るのは不可能
・虫を食べ続けていく為に大陸を横断
・他の地で騒がれていない?のは、日本と違い面積が広く、
たまたま人の居ない所を通ってきた or
人が居た所もあったけど、戦争とかで鳥所じゃない所を通過した or
目指すはニッポンで、他の地では、最長いても一日だけだった
というのがluluの妄想です。
日本の生態系、今後毎年渡ってくる鳥だとしたら、
繁殖力旺盛で大食漢の彼らなら壊す可能性もある
かもしれませんね。
いやー、すごい時代が来てしまったーという感じがしています。
』
ビデオもあります。
『
キヅタアメリカムシクイ:ビデオ
http://www.youtube.com/watch?v=t9zU23VUgmI
』
「アメリカムシクイ」という鳥だが日本では初見参ということのようである。
実をいうと、この鳥が渡り鳥だとは知らなかった。
アメリカムシクイというのは「世界一の大食漢」という風に憶えていたからだ。
そんな大食漢が渡り鳥であるはずがないし、見た目からして渡り鳥といった感じはしない。
Wipkipediaでアメリカムシクイを調べてみる。
『
● キンイタダキアメリカムシクイ
アメリカムシクイ科(あめりかむしくいか、学名 Parulidae)は、鳥類スズメ目の科である。
分類によってはアメリカムシクイ亜科 Cardinalinae・アメリカムシクイ族 Cardinalini とも。
アメリカムシクイと総称される。
ムシクイ類の米州における収斂とみなされるが、ウグイス上科のムシクイ類とは疎遠である。
狭義にはこの1種をアメリカムシクイと呼ぶ。
南北アメリカにのみ生息する。
全長11–18cm。黄色・橙・緑や、白黒などの、鮮やかな羽色の種が多い。
森林・草原などさまさまな環境に暮らす。
ほとんどが昆虫食で、枝葉や草に止まった昆虫を捕食するが、種子や果実を食べる種もいる。
』
ではなぜ「大食漢」というイメージが頭に張り付いてしまったかというと、この本による。
20年ほど前のすこぶる著名な本である。
● 本川達雄著「ゾウの時間 ネズミの時間」 1992/08
この本にアメリカムシクイが出てくるのである。
抜粋してみよう。
『
餌の大きさは体重に正比例して大きくなる。
ところが、一日平均の食べる量は体重の「3/4乗」にほぼ比例する。
つまり、体重が増えるほどには、増えないのである。
これから予想されることは、大きいものほど、いちどきに大きい餌を食って、あのあとずーっと何も食わずにいて、食事の間隔が間遠になるのではないかということだ。
一日に何匹の餌を殺すか(殺生率)を、摂食率と餌の大きさから計算することができる。
体重(W)と殺生率(K)との関係は次のようになる。
K=137W**-0.49 (小さい餌を食う恒温動物)
K=3.0W**-0.47 (大きい餌を食う恒温動物)
(注:**は乗数を表す)
どちらも体重の「マイナス1/2乗」にほぼ比例している。
よって殺生率はサイズとともに、急速の減少する。
また、2つの比例係数を比較すると、小さい餌を丸のみにするものは、同じサイズの大きい餌を食うものに比べ、40倍もの数の動物を殺すことが分かる。
だから、体が小さくて餌を丸のみするものは、ひっきりなしに餌をついばんでいなければならない。
』
ここまでは理論。
以下は具体例。
『
具体的な数値を見てみよう。
アメリカムシクイという鳥がいる。
体重10グラムほどのこの小さな美しい鳥は、ひっきりなしに樹間で虫を捕まえては、丸のみにしている。
この大きさの鳥がどのくらいの頻度で虫を捕らえるか計算すると、一日に「1,300匹」と出る。
鳥の活動時間を一日12時間とすれば、なんと「30秒に1匹」、餌をとる計算になる。
一方、体重100キログラムのジャガー程度の動物なら、3日に一度獲物を捕ればいい。
』
これを読むと「大食漢」ということを納得できるのではないでしょうか。
30秒に1匹捕るとるということは、そういう環境にいないといけないことになる。
渡り鳥がそんなことできるであろうか。
長時間飛び続けないと「渡り」はできない。
渡りをやっているときの捕食はどうなるのだろう。
どう考えてみても「渡り鳥」という発想は出てこない。
もちろん、アメリカムシクイの範囲はWikipediaでみるように広い。
よって中には渡り鳥もいるということであろう。
ツバメもあの大きさで渡り鳥であるのだから。
ちなみに日本でも「ムシクイ」はいる。
が、これは上記のWikipediaでわかるようにアメリカムシクイとは違う。
「ウグイス科」に分類されている。
なんとあのウグイスです。
★.アメリカムシクイ=スズメ目アメリカムシクイ科
★.日本のムシクイ=スズメ目ウグイス科
日本のムシクイはこちらのサイトから。
『
野鳥の杜 Vol.46 ムシクイの仲間
スズメ目ウグイス科メボソムシクイ属13種 アメリカムシクイ科1種
http://www014.upp.so-net.ne.jp/wildbird/uguis_5.htm
ムシクイ類種別識別講座
http://f40.aaa.livedoor.jp/~phyllon/warbler/warbler-table.html
』
最後に、オーストラリアにムシクイはいるか?
ということであるが。
「いる、でもいない」
なんという矛盾したいい加減な答え、となるが。
Wikipediaでみてみる。
『
オーストラリアムシクイ科 (オーストラリアむしくいか、学名 Maluridae) は、鳥類スズメ目の1科である。
オーストラリア大陸とニューギニアに生息する。
「ムシクイ」とあるが、ムシクイ類とは生態・形態が似るものの特に近縁ではない。
ほとんどは5–10g、最大でも40gという、小型の科である。
古い分類では、ヒタキ科・ウグイス科・チメドリ科に分散して分類されていた。
現在ではミツスイ上科の中では最初に分岐した科である。
1975年にオーストラリアムシクイ科と新たに分類される以前は、ヒタキ類であるヒタキ科に分類され、のちにムシクイノ仲間であるウグイス科に分類されていた。
さらに近年になり、DNA分析によりオーストラリアムシクイ科はミツスイ上科のミツスイ科とホウセキドリ科に近縁であることが示された。
』
つまり、こういう分類になる。
★.オーストラリアムシクイ=スズメ目ミツスイ上科オーストラリアムシクイ科
ここのミツスイは「ウグイス科」ではなく「ミツスイ科」になるのである。
つまり名前だけムシクイであり、本当はミツスイとなる。
ムシクイ(虫食)なら肉食系、ミツスイ(蜜吸)なら草食系となるのだが。
肉食の強い雑食系である。
なを、分類では「ミツスイ上科」は省略されて、「スズメ目オーストラリアムシクイ科」と表示されることが多い。
★.オーストラリアムシクイ=スズメ目オーストラリアムシクイ科
「オーストラリアムシクイ」で検索すると3種類が日本語Wikipediaに出てくる。
①.ルリオーストラリアムシクイ: Superb Fairy-Wren
②.ムナグロオーストラリアムシクイ:Variegated Fairy-Wren
③.ムラサキオーストラリアムシクイ:Splendid Fairy-wren
このうち③のムラサキオーストラリアムシクイはここ南クイーンズランドの海岸地域には生息していないので、これを除くと上2種類が普通に観察できるムシクイということになる。
「ムナグロオーストラリアムシクイ」をWikipediaから。
『
● オス
ムナグロオーストラリアムシクイ (Malurus lamberti)は、スズメ目オーストラリアムシクイ科オーストラリアムシクイ属の鳥類。
全長13~14cm。
食性は、昆虫色の強い雑食性で、小さな昆虫をはじめ、小さな種、果実なども採食する。
家族を基本にした5羽程度の群れで行動し、繁殖は群れで共同して行う。
』
ひじょうに出会いがあり、よく観察できるのが「ルリオーストラリアムシクイ」。
Wikipediaから。
『
● 左がオス、右がメス
ルリオーストラリアムシクイ(Malurus cyaneus)はスズメ目オーストラリアムシクイ科の鳥類で、オーストラリア南東部で普通に観察される鳥である。
オーストラリアの固有種。留鳥であり、なわばりを持つ。
ルリオーストラリアムシクイは、まばらな灌木地や、適度な密度の森林地帯、草原地帯、ヒースや家の庭など隠れ場所となる密集した下層植生がある地域であれば、観察することができる。
都会にもよく適応し、シドニーやキャンベラ、メルボルンの郊外でも普通に生息している。
ルリオーストラリアムシクイは全長14 cm 、体重8–13 g で、オスは平均してメスよりも少し大きい。
平均の尾の長さは5.9 cm で、同属内では最も短い。
ルリオーストラリアムシクイは主に昆虫を食べ、補助食として種子も採食する。
アリ、バッタ、カメムシ、ハエ、ゾウムシや様々な幼虫など小さな生き物、主に昆虫を幅広く補食する。
また同様に小さな種や花、果実なども採食する。
'hop-searching'(ぴょんぴょんと跳び回りながら探餌する方法の意)と定義される彼らの採餌方法は、地上や2m以下の灌木の中で行われる。
この採餌行動はこの種に対し外敵から狙われる危険があるために、お互いに近い距離を保ちながら、グループで採餌を行う。
冬の間の餌が乏しくなる時に、アリは食料の高い割合を占める重要な食料である。
成鳥と比べて幼鳥は幼虫やバッタのような大きめの餌を給餌される。
』
この鳥、「アリ」を食べるようですね。
アリクイを除けば、アリを食う生き物というのは知られていないのではないだろうか。
そこまで食い意地が張っているということは大食漢とみていい。
通常、こういう生き餌をエサにする鳥を個人が飼うということはない。
まして、大食だとすると手に負えない。
ではその「大食漢:ルリオーストラリアムシクイ」のビデオを。
オスは青・青紫といった色がひじょうに美しいが、メスはじつに地味である。
よってオスは遠くからも分かるが、メスはちょっと見分けにくい。
まず、メスから。
● メス
次はオスを。
● オス
この鳥の特徴をWikipediaから。
『
他のオーストラリアムシクイと同様に、ルリオーストラリアムシクイはいくつかの特徴的な行動の特性で注目すべき種である。
オーストラリアムシクイ類は一夫一婦制であるが、同時に浮気性でもある。
つがいは生涯にわたり同じであるが、オスもメスも、普段から他の個体と交尾を行う。
つまり、若鳥の一部は、群れ外からやってくるオスが父親となっていることがあるのである。
若鳥は常に単独のつがいによって育てられるわけではなく、他のつがいの補助をしているメスと交尾をした他のオスとともに育てられる。
主な天敵は、カササギフエガラス、モズガラス類、ワライカワセミ、フエガラス類、カラス類、モズツグミ類や、移入種であるアカギツネ、ネコ、クマネズミなどがあげられる。
』
一夫一婦制でありながら乱交するという。
これは性的ニ型のためである。
「性的ニ型」とはオスとメスが明らかに違う特徴を持つことをいう。
みれば分かるとおりオスが華やか過ぎ、反してメスが地味すぎる。
この結果、地表近くを捕食域とするため、オスは非常に天敵に狙われやすくなる。
よって成鳥するとオスとメスの数のバランスが崩れてしまう。
そこで、一夫一婦制をとりながらも、種保存のためには乱交形式を採用せざるを得なかったという説が有力になってくる。
ちなみに学術的な調査ではこう言われている。
『
異文化コミュニケーション研究科 | 立教大学
http://www.rikkyo.ac.jp/feature/featured_class/2008/10/post-160.html
ルリオーストラリアムシクイという鳥は、なんと75パーセント以上が浮気相手の子供だという調査結果があるから驚きです。
しかしこれには訳があります。
もともとルリオーストラリアムシクイは縄張りを張りながら、集団生活をする鳥です。
その縄張りの中で、親鳥が死んでしまった場合、子供がその死んだ親鳥の代わりに残った親鳥と結婚する、いわゆる近親婚を行います。
この場合、遺伝子情報がちかいもの同士が結婚することになるので、劣性遺伝子の発生率が高まってしまい、正常な子孫が残せない可能性が発生します。
そこでルリオーストラリアムシクイは浮気をしてそれを避けるわけです。
ここまで浮気と言ってきましたが、これにもきちんとした名前がついていて「EPC:つがい外交尾」といいます。
鳥にとっては、 EPCは浮気ではなくて自然の法則にのっとって行っていることで、種の保存のためになくてはならないものなんですね。
今回はルリオーストラリアムシクイを例に挙げましたが、鳥の世界で様々な理由でEPCが行われているようです。
』
何か、無理に苦し紛れに人間的視線での論理を貼りつけたような感じを持ってしまうのだが。
● 花いろいろ